特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入 (2009/4/10)
1.特殊支配同族会社とは
平成18年に施行された会社法により法人を作ることが容易になったことから、実質的な一人会社オーナー(業務主宰役員という。最も中心的な役員のこと。通常は社長)の役員報酬の一部を損金不算入(経費とならない)とすることとなりました。
適用対象法人(経営者一族がその会社の経営を牛耳っている法人)
以下の(イ)(ロ)の両方を満たす場合に適用となります。
(イ)持株割合が90%以上
業務主宰役員とその親族が法人への出資を90%以上している場合。
(ロ)常勤役員の半数以上
業務主宰役員とその親族が常勤役員の半数以上である場合。
基準所得金額が年1,600万円以上
適用される場合は基準所得金額を計算します。
基準所得金額とは、前期以前3年間の法人の所得金額と社長の役員報酬の合計額を3で割った1年間の平均金額です。(繰越欠損金がある場合は計算が異なります)
この基準所得金額が年1,600万円を超えると社長の役員報酬の一部が損金不算入となります。
前期以前の事業年度がない場合(新設法人など)は、当期の事業年度を基に計算します。
損金不算入となる金額
損金不算入となるのは社長一人の役員報酬の給与所得控除額分であり、他の役員の役員報酬は損金算入となります。
業務主宰役員給与額 | 損金不算入額 |
65万円以下 | 業務主宰役員給与額 |
65万円超 180万円以下 | 業務主宰役員給与額×40% (65万円に満たないときは65万円) |
180万円超 360万円以下 | 72万円+(業務主宰役員給与額-180万円)×30% |
360万円超 660万円以下 | 126万円+(業務主宰役員給与額-360万円)×20% |
660万円超 1,000万円以下 | 186万円+(業務主宰役員給与額-660万円)×10% |
1,000万円超 | 220万円+(業務主宰役員給与額-1,000万円)×5% |
2.具体例(社長一人が100%出資して、役員も社長一人の場合)
当期(第10期目):社長の役員報酬 900万円
法人の所得金額 | 社長の役員報酬 | |
第7期 | 800万円 | 1,100万円 |
第8期 | 500万円 | 1,000万円 |
第9期 | 200万円 | 1,500万円 |
合計 | 1,500万円 | 3,600万円 |
平均 | 500万円 | 1,200万円 |
持株割合が100%のため90%以上で、常勤役員が一人のため半数以上となり、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入が適用されます。次に基準所得金額を計算します。
(第7~9期の合計:法人所得金額1,500万円+社長役員報酬3,600万円)÷3=1,700万円
3年間の平均が1,700万円となり1,600万円を超えます。
損金不算入となる金額は、当期(第10期)の社長の役員報酬が900万円のため、業務主宰役員給与額が上記の660万円超1,000万円以下に該当します。
186万円+(900万円-660万円)×10%=210万円
このように役員報酬900万円のうち210万円が損金不算入となります。
前期(第9期)の決算が確定した時点でこの規定が適用されるかがわかりますので事前に把握していないと、当期(第10期)の法人所得金額が210万円増加し思わぬ法人税が発生することとなります。
3.適用除外
次の場合は適用されません。
- 基準所得金額が年1,600万円以下
- 基準所得金額が年1,600万円超3,000万円以下で、かつ、基準所得金額に占める業務主宰役員の給与額の年平均額の割合が50%以下
(2.は上記具体例では、第7~9期の社長の役員報酬の平均1,200万円÷準所得金額1,700万円=70.5%のため50%超となります)