【防衛力強化に係る財源確保のための税制措置】(令和7年度税制改正)
防衛特別法人税について、理解しましょう!

現在の我が国を取り巻く安全保障環境は、ウクライナ情勢や中東・アジア太平洋地域をめぐる動向など、依然として不透明で緊張の高まりが続いています。このような状況を踏まえ、国の防衛力を「抜本的に強化」し、その維持を図る必要性が高まっています。
そのためには、防衛関連予算を中長期にわたって安定的に賄えるよう、税制面からの対応が重要とされており、今回の税制改正ではその「財源確保」を明確な目的としています。
なお、政府の「令和7年度税制改正大綱」においても、「国際環境の変化等に対応するため、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」を実施すると明記されています。
主な改正内容
改正措置は大きく2つの柱で構成されており、対象税目としては主に法人税およびたばこ税が挙げられています。所得税についても対象とされていますが、令和7年度時点では具体的な時期・税率などが未だ検討段階にあります。
(1) 法人税:防衛特別法人税(仮称)の創設
- 各事業年度における「基準法人税額」(※所得税額控除・外国税額控除などを適用する前の法人税額)を課税標準とし、年額500万円の「基礎控除額」を控除した後の金額に対して、4%の税率を課す方式となります。
- 例えば、基準法人税額が500万円以下の場合には税負担が発生しない仕組みとなっており、全法人の中で影響を受けるのはおおよそ6~7%程度と見込まれています。
- 適用開始時期は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度からと予定されています。中間申告への対応など詳細は令和9年4月1日以後開始の課税事業年度から適用とされており、準備期間を確保しています。
(2) たばこ税:加熱式たばこ課税の見直しおよび税率引上げ
- 加熱式たばこについては、現行は「紙巻たばこ換算本数×1.0」という方式ですが、改正では 令和8年4月1日から「現行換算本数×0.5」、同年10月1日から「新換算本数×0.5」といった段階的な移行を行い、その後、段階的に本格課税方式へ切り替えます。
- たばこ税(国税部分)そのものについては、令和9年4月1日・令和10年4月1日・令和11年4月1日の3段階で税率を引き上げる予定です。
(3) 所得税:検討継続
所得税については、令和5年度の税制改正大綱で「所得税・法人税・たばこ税を増税対象とする」とされたものの、令和7年度大綱では所得税に関しては「物価高に直面する国民生活に配慮」する観点から、実施時期等の検討継続とされました。
適用時期・スケジュール
| 防衛特別法人税(仮称) | 令和8年4月1日以後開始する事業年度から適用。 |
| たばこ税の加熱式たばこ課税方式の見直し | 令和8年4月1日・令和8年10月1日の2段階。 |
| たばこ税の税率引上げ | 令和9年4月1日、令和10年4月1日、令和11年4月1日の3段階。 |
| 所得税について | 具体的な時期未定。今後動向を注視する必要があります。 |
実務上のポイント・影響
- 法人税の追加負担は、仮に基準法人税額の4%を付加するということで、法人税率約23.2%の法人を前提とした場合、課税所得額ベースでおおよそ「所得の1%弱」の増税となる試算もあります。
- 中小法人への配慮として、基礎控除500万円が設けられており、一定以下の法人には課税が発生しないため、「ほとんどの法人には影響がない」との見方もあります。
- たばこ税改正では、特に加熱式たばこを扱う事業者・流通業者において、換算方式の変更・税率引上げを見越した在庫管理・価格対応の検討が必要となります。
- 所得税関連の改正が今後出る可能性があるため、個人所得者・働き手・家庭に与える影響も早めに情報収集しておくことが望ましいです。
- 全体として「防衛力強化を支えるための税制」という新たな位置づけであるため、今後も税制・財政・安全保障政策の連動を注視することが重要です。
今後、関連法案の成立や実務上の適用準備が進むことが想定されるため、法人・個人ともに影響を把握し、対応を検討しておく必要があります。
京都ミライズ税理士法人からのワンポイントアドバイス
中小企業の場合、課税所得が2430万円以上であれば防衛特別法人税が発生るする可能性があります。









